[スポンサーリンク]

一般的な話題

ポンコツ博士の国内奮闘録 ~博士、教員として過ごしてはや2年~

[スポンサーリンク]

本稿は,少子化の影響が著しい地方私立大で学位を取得したとあるしがない博士(薬学)が、厳しい世の中を生きるためにアカデミアの世界にポロっと踏み込んでしまってから、いまだに比較的ズブズブ状態で大学教員として働いている経験談を際に自由気ままに綴るエッセイです(都会に薬学部に増やしすぎて地方薬学志望者、減りすぎじゃない…?もくもくと実験するなら維持費に金を稼がないとかなりきつい国立より古豪私大の研究設備・環境はかなりいいぞ!)

使えるAIの出現により、さらに個々の均一化が進む中、「そのキャリアパスは,誰の「正解」ですか?」と問われる昨今で、筆者のリアリティが、将来のキャリアパスに悩むケムステユーザーに1%程度は参考になって「しんどい時にクスッと笑って研究に戻るきっかけ」となれば幸いです。

ポンコツシリーズ

国内編:1話2話3話

国内外伝:1話2話留学TiPs

海外編:1話2話3話4話5話6話7話8話

続きだよ9話10話11話12話13話14話

続きの②15話16話17話18話19話20話

締めの③21話22話23話24話

ポンコツ教員の国内奮闘録

――吾輩(わがはい)はしがない博士(薬学)である。名前(立派な肩書き)はまだ無い。(この10年で希少性が超高まった薬剤師免許持ち博士が)どこで生れたかは、とんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所で(とある学会で酒を飲んでベロンベロンになって)、ニャーニャー泣いていた事だけは記憶している――

夏目漱石:「吾輩は猫である」を一部改変

前回の記事から早くも2年半。コロナ期のケムステヘビー読者から読者層が大体一周した頃である。最近の学生に「どうもケムステのポンコツです」と名乗っても、「…?はぁ…?」という反応が増えたものの、筆者は相変わらずアカデミア社会に生息している。

一方で、本連載の影響か、大学教員や企業の方と名刺交換する際に普通に挨拶するとそのまま忘れ去られるのに「どうもケムステのポンコツです」と一言添えると、「あぁ!あなたがポンコツさんで!」と認知していただけるようになった。研究職を離れたタイミングでアカデミア社会に何かしらの痕跡を残すために始めた連載であるが、結果として”珍獣枠”を確保できたことを考えると、やっておいてよかったと思う。高IF誌への掲載と同様、「認知されること」は比較的重要である(大切なのは、その後、その先派)。化学アカデミア界における「悪名は無名に勝る」を、そこそこ体現できているのではないだろうか。記事を残す選択先にケムステを選んでおいてよかったと思う。

また、本記事を知らない先生に「どうもポンコツです」と言ったときの気まずさが多少あったが、もともと失うものは大してないのだから、気まずくなる必要もないことに気がついた。引き続き、人生の底辺から手に入れたこの強メンタルは維持していきたい。このままいくとアカデミア界の炎上系になりそうで少し怖いが…。

ポンコツ助教,最近の所感を綴る

帰国してから思うのは、博士課程や国内ポスドク時代に比べて「個の実験研究者としての修羅場」が減りつつある、ということである。現ボスのデスクワークやマネジメントの手厚い手ほどきを受けつつ、自分なりに培ってきた観察眼をもとに、「こうすればいいのか、なるほど」と背中からも学びながら、日々を過ごしている。一方で、10年前のあの頃と比べてライフ・イン・ワークが重要になってきた昨今、「このままじゃ自分は数年後詰む」という焦燥感がやや薄れてきていることに、少し危機感も覚えている。今の時代はチームで物事を進める時代であるが、振り返ると、20〜30歳頃に寝食を忘れてほぼ個で物事を真っ直ぐ進めることだけに没頭していた時期こそが、一番楽しかったのかもしれない。絶賛映画放映中のプラダを着た悪魔2および、プラダを着た悪魔や前作のクリエイター系研究者に刺さる左利きのエレン(原作、ジャンプ+漫画版)で出てくる言葉、続編の左利きのエレンHYPE, DOPEを愛読する管理職は分かるかもしれない。

左ききのエレンより好きなシーンを一部抜粋した(アルより転載)。「明日死ぬつもりで作る。ただそれだけのことをこなすこと」。現在ではパラハラ・アカハラドンピシャワードだが、この言葉を体現・実現する難しさを年々実感している。

一方、時代の変化と加齢もあり、物事への「熱の注ぎ方」自体が変わってきているのでこれに対応しなければならない(個人的には、加齢とともに酒乱(特に異常酩酊)の傾向が高まっており、自身の肝臓の衰弱に対して早急に対応する必要がある、脂肪肝か?)。とりあえず、筆者はお仕事能力としてはデスクワーク能力が壊滅的なので、そのあたりはAIのサポートも活用しながら効率化・改善していく必要がある。同時に、これから取り組むすべてのことが今後のいいものを作る「ものつくり」につながっているという「臨場感」を、いかに自分で感じ、そして周囲に伝えていくかが重要なのではないかと感じている(と、チャッピー先生にここまでのプロローグを校正していただいた。もう少し知的な感じで修正しますと直してくれた)

ポンコツ助教,あの学会に参加する。

さて、今回の記事の本題に入りたい。研究に対するインスピレーションの源泉は、やはり筆者の原点の一つである天然物化学にあるのかもしれない――そう考えた筆者は、「あの会」に参加することにした。そう、日本の天然物化学のレジェンド先生方が、天然物討論会と対をなす形で立ち上げた「あの会」である。HPでその歴史を辿ると、恩師のボッスの、さらにそのボッスが第一回に参加しているらしい。その伝統派の中では、筆者自身は某系の人間ではあるが、流派的にはその流れを汲んでいる…はずである。

奇しくも、筆者が本連載を始める前後から温めてきた研究テーマを着任後に開始し、初めて薬学会でお披露目したところ、「懐かしい化合物やってるね。昔、〇〇ラボで精力的にやってたから昔を思い出すよ」という、会の発起人で“マジックの上手い先生”研に在籍しておられた先生からなんとも味わい深いコメントをいただいた。やはり、古い良き天然物化学研究の中に新しいヒントが眠っている。歴史はきちんと紡がれていくのだな、としみじみ感じた次第である。

まとめ。

本記事を要約すると,あの会に、(研究室の財布が許す限り)ぜひ学生も参加してほしい壮大な宣伝記事だったということである。これからの天然物化学に夢や憧れを持つ学生にとって「熱」い夏になれば、幸いである(締め切りは今月末だったかな?)。有機溶媒買えなくなって研究が止まり、その結果購入資金が余ることで参加許可が増える–研究上としては最悪だが、会としてはハッピーな出来事が、ワンチャンあるかもしれない

今回は、海外編のエピローグかつ、ポンコツJKのプロローグとして本記事を締めたい。

〜〜続く??〜〜

なお、筆者は現在

金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿状態のため、あまり記事を書く余裕はないのだが、不定期(連休中とか)で連載したいと考えている。

関連書籍

プラダを着た悪魔 (吹替版)

プラダを着た悪魔 (吹替版)

Meryl Streep, Anne Hathaway, Stanley Tucci, Emily Blunt
Amazon product information

関連リンク

いらすとや :アイキャッチ画像の素材引用元

アル:転載可能な漫画の一コマを利用できるサイト

NANA-Mer.

投稿者の記事一覧

たぶん有機化学が専門の博士。飽きっぽい性格で集中力が続かないので,開き直って「器用貧乏を極めた博士」になることが人生目標。いい歳になってきたのに,今だ大人になれないのが最近の悩み。読み方はナナメルorナナメェ…?

関連記事

  1. ダウとデュポンの統合に関する小話
  2. アメリカで Ph.D. を取る -Visiting Weeken…
  3. 分子間相互作用の協同効果を利用した低対称分子集合体の創出
  4. 配位子を着せ替え!?クロースカップリング反応
  5. プロドラッグって
  6. 複雑な試薬のChemDrawテンプレートを作ってみた
  7. NMRの測定がうまくいかないとき(2)
  8. Pixiv発!秀作化学イラスト集【Part 1】

注目情報

ピックアップ記事

  1. MDSのはなし 骨髄異形成症候群とそのお薬の開発状況 その1
  2. 産総研で加速する電子材料開発
  3. REACH/RoHS関連法案の最新動向【終了】
  4. 化学者のためのエレクトロニクス講座~フォトレジスト編
  5. マテリアルズ・インフォマティクスにおける回帰手法の基礎
  6. 第35回「金属錯体の分子間相互作用で切り拓く新しい光化学」長谷川美貴 教授
  7. START your chemi-storyー日産化学工業会社説明会2018
  8. 製薬特許売買市場、ネットに創設へ…大商とUFJ信託
  9. 塗る、刷る、printable!進化するナノインクと先端デバイス技術~無機材料と印刷技術で変わる工業プロセス~
  10. 指向性進化法 Directed Evolution

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2026年5月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

世界初のPROTAC医薬、ついに承認 ―「タンパク質を阻害する」から「分解する」時代へ

2026年5月、創薬化学の歴史に残る大きな出来事が起きました。米国 FDA は、…

有機蛍光とは異なる新しい有機りん光の分子設計指針の発見

第707回のスポットライトリサーチは、電気通信大学 情報理工学研究科(牧昌次郎研究室)の林希久也 助…

NEDO懸賞金活用型プログラム/量子コンピュータを用いた社会問題ソリューション開発2

「NEDO懸賞金活用型プログラム/量子コンピュータを用いた社会問題ソリューション開発…

株式会社ナード研究所ってどんな会社?

株式会社ナード研究所は、化学物質の受託合成、受託製造、受託研究を通じて、研究開発…

付加重合でポリアミドを作る!?:多段階ラジカル異性化による新たなポリマー主鎖構築

第706回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院工学研究科(大内研究室)に所属されていた黒田啓太…

第33回光学活性化合物シンポジウム

第33回光学活性化合物シンポジウムのご案内光学活性化合物の合成および機能創出に関する研究で顕著な…

Carl Boschの人生 その13

Tshozoです。 少し唐突ですが最初に大事なお知らせを。世界トップの化学会社BASFがCarl…

ラングミュアの吸着等温式 Langmuir equation

ラングミュアの吸着等温式 (Langmuir equation) は、等価な吸着サイトが独立に振舞い…

【化学・食品業界向け】 蒸留による分離・濃縮をシンプルで省エネに ~無機分離膜が起こすイノベーション~

■概要ものづくりにおいて重要な分離操作。有機溶剤の混合物の分離リサイクル。水の分離(脱水…

濃硫酸の1000倍強い超酸の中でも蛍光を保ち続ける”超酸耐性BODIPY”

第705回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院総合化学院(反応有機化学研究室)博士後期課程2…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP